直線上に配置
粒子の製造方法および製造装置ならびに粒子
特許番号:5614678

概要

 気相合成したナノ粒子を光重合性モノマーの光化学反応を利用してポリマー被覆法する方法に関する特許

背景

 表面がクリーンな金属ナノ粒子は、互いにくっついて凝集体となりやすいということが知られています。これは、ナノ粒子表面が酸化物などで覆われておらず、直接金属原子が表面に出ている状態だと別々の粒子に属する金属原子間で互いに結合を作って表面積を減らそうとするために起こります。そして、そのようにして結合を作ってしまうと、粒子間を電子が行き来してしまったりして、もはや別々の粒子とは言えず、元のナノ粒子の大きさに起因する性質が失われてしまう可能性があります。また、一度結合ができてしまうと容易に引き離すことができなくなってしまいます。
 そこで、凝集を防ぐためにナノ粒子の液相合成では、生成したナノ粒子の表面を界面活性剤で覆ったり、ナノ粒子に電荷をもたせたりして溶媒中に分散させて粒子どうしが近づかないようにしています。気相合成したナノ粒子では、分散した状態を維持することが困難なため、表面を少し酸化させたり、他の物質を表面につけたりして、金属原子どうしが接触しないようにして凝集を防いでいます(図2)。
 しかしながら、上記のような界面活性剤を結合させる方法では、界面活性剤と金属原子の結合が強いため(強くないとすぐに界面活性剤が外れてしまうので強いものを使う必要がある)、ナノ粒子の性質に強い影響を与えてしまったり、界面活性剤が不要になったときに容易には取り除けなかったりします。表面を酸化させる方法も同様で、酸化によってナノ粒子の性質が変わってしまう場合があります。

解決方法

 そこで、気相中に分散したナノ粒子が凝集する前に表面をポリマーで被覆する処理をおこなって、ナノ粒子どうしが直接接触するのを防ぎます(図3)。具体的には、まず初めに、気相中で合成したナノ粒子に、光重合性のある物質(光重合性モノマー)の蒸気を混合します。次に、この混合気体(エアロゾル)に紫外線を照射してモノマーを重合させて粒子表面にポリマーの被覆を作ります。このとき、被覆対象となるナノ粒子が核になるため重合性モノマーはナノ粒子表面に選択的に付着していくと考えられます。被覆されたナノ粒子をフィルターを使って捕集するなどします。
 得られたナノ粒子は既に表面がポリマーで覆われているためナノ粒子どうしが接触しても元々のナノ粒子どうしが接触しないので、ナノ粒子としての性質が損なわれないと考えられます。また、有機溶媒などに可溶なポリマーで被覆すれば、後で必要な時に溶媒で被覆を溶かして、被覆のないナノ粒子に戻すことも可能です。

試験結果

 被覆対象のナノ粒子の材料と被覆の原料となる光重合性モノマーの種類は多数考えられますが、一例として、銀ナノ粒子に、けい皮酸ビニルを光重合性モノマーとして用いて被覆した例を下に示します。
 図4は微分型電気移動度分級器(DMA)と呼ばれている気相中に分散した荷電微粒子の径を静電引力と流体抗力を利用して分けるための装置を用いて測定した被覆前後の粒子径の分布を示しています。通常は粒子はある程度の大きさのばらつきを持って生成するため図4のように分布に幅があります。分布のピーク直径に注目してみると、ポリマー原料を入れていないときの5 nmからポリマー原料を増やしていくと、8 nm、11 nmとピーク直径が大きくなっていくことが分かります。これは、ナノ粒子表面にポリマーが生成したためだと考えられます。ここには示していませんが、ポリマー原料を入れても光を照射しない条件では粒子径に変化が見られないためポリマー原料が付着するなどして粒子径が変化しているのでないこともわかっています。

(加筆中)

 この特許の利用に関しては理化学研究所(知的財産担当部署)にお問い合わせください。その際、「発明者工藤の解説ページ(このページ)を見た」と伝えていただけると、その後の話がスムーズに進むかと思います。
このページの記載内容は、特許の内容を説明するものですが、
わかりやすく説明するうえで正確さが失われている可能性があります。
そのため、特許の内容については明細書等の内容が優先されます。

直線上に配置