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学生実験「ファラデー定数の測定」における工夫


フレーム


アイコン 概要
   学生実験「ファラデー定数の測定」においてより正確なファラデー定数が出せるように実験機材を構成したりしました。
 この実験では硫酸銅水溶液からの銅の析出量、流れた電流量および時間を測定してファラデー定数を求めます。
 正確な値を出すことそのものは学生実験の主題ではありませんが、私は、学生には、正確で正しい実験操作をおこなえば、正確な値が出せることを学んでほしいと思います。当然のことながら実験条件なども重要な要素であり、実験者が整えるべきではありますが、学生実験では基本的な条件は教員側が整えるべきだと思います。そこで、誤差の原因を検討し、主に下記の二つの対策をおこないました。
  • 電流計の誤差の修正
  • 電池の代わりに定電圧電源を使用
 電流計については、すべて並列にして測定すると明らかに各電流計の値が異なることがわかったので、読み値に対して正確な値に換算するための係数を掛けて計算に用いるようにさせました。
 電源については、電池では放電に伴って電圧が下がっていくために電流値の変動が大きくなり、誤差が大きくなることが予想されます。さらに金属の析出量が少なくなるため、重さの計測時の誤差も大きくなることも予想されます。定電流電源を使うというアイディアもあるようですが、一定電流を保とうとすると電圧が変動し、それによって電極での反応が変わってしまう可能性が出てくると予想されるため定電圧としました。

アイコン 定電圧電源装置について
 いわゆるレギュレーターを使用したもので容易に製作できます(下記図)。使用しているレギュレーターはNJM2845DL1-18(1.8V)です。また、この電源の電源は3.3Vのスイッチング電源を使用しています。なぜこんな回りくどいことをしているかといえば、電圧の安定化のためと、1.8Vのスイッチング電源の入手が難しいためです(コスト的にも)。
 また、緑のLEDは回路に電気が供給されていること、赤のLEDは外部へ電圧を出力していること(この実験でいえば電気分解中であること)をそれぞれ示しています。直接実験とは関係がないことですが、学生実験中に配布している「定電圧電源装置の使い方」に、「ここで使われている赤のLEDも暗いので明るい緑に変えたいのだが難しい。それはなぜか?」という問いかけを記しています。電子・電気系の学生ならば、「そんなの簡単だ!」と言ってほしいところですが。
 製作は容易なのですが数が8個ともなると結構大変です。電子工作の他にもケースの加工なども必要なので。


図 動作中の定電圧電源装置


アイコン 結果
 実際に学生実験で得られたファラデー定数の平均値と標準偏差を下の表に示しました。2014年度は、2012年度と比較すると平均値がより参考値に近づいていて、ばらつきも小さくなっていることが分かります。これは上記の対策の結果であると考えられます。片方の対策のみおこなった場合についての結果がないため、どちらがより有効な対策であったのかは残念ながらわかりません。
 上手く実験をおこなった学生は正確なファラデー定数に近い値を出せているようで、こんなに正確な値が出せるんだ、といった感想も見受けられます。




図 定電圧電源を使用した実験の写真


表 得られたファラデー定数の比較
年度 平均値 (C / mol) 誤差 (%) 標準偏差
2012 9.50×104 -1.6 3.6×103
2014 9.63×104 -0.2 2.7×103
参考値(CODATA) 9.64×104



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